これは、私たちがお客様からとてもよくいただくご相談です。
「多ければ多いほど安心」と思われるかもしれません。たしかに、万が一に備えるという意味では、手元資金が多いほど安全性は高まります。
しかし、使い道が決まらないまま手元に置いているだけでは、会社の成長のためにお金をうまく活かせていないとも言えます。少なすぎれば不安になり、多すぎれば投資の機会を逃してしまう。どちらにも偏らない「最適な水準」があるのです。
自社にとっての最適な目安を持っておけば、
資金の不安に振り回されることなく、
明確に前を向いて経営できるようになります。
その目安になるのが、今回ご紹介する「資金の持ち月数」です。
- 資金の持ち月数とは、手元資金で、毎月出ていくお金を何か月分まかなえるかを示す指標です。
- 計算方法は「月商で割る」方法と「固定支出で割る」方法の2つ。両方を確認するのがおすすめです。
- 目安は月商の1.5か月分、または固定支出の6か月分。下回れば早めの対策を、大きく上回ればお金の活かし方を考えましょう。
WHAT資金の持ち月数とは
売上が減ったり、入金が遅れたりしたとき、会社は今ある現預金で支払いを続けることになります。資金の持ち月数は、その「耐えられる期間」を月数で表したものです。
決算書の利益が黒字でも、手元資金が不足すれば支払いができず、会社は立ち行かなくなります(いわゆる黒字倒産)。資金の持ち月数は、利益だけでは見えない会社の安全度を、ひと目で確認できる指標です。
HOW計算方法は2つ
方法 01
月商で割る(月商倍率)
金融機関などでもよく使われる考え方で、「手元流動性比率」とも呼ばれます。
方法 02
固定支出で割る
人件費・家賃・借入金の返済など、売上がなくても出ていくお金で割ります。「売上が止まっても何か月耐えられるか」が実感に近い形でわかります。
計算例
同じ会社でも、どちらで見るかで数字は変わります。両方を確認するのがおすすめです。
STANDARD目安はどれくらい?
月商基準
固定支出基準
※陽太グループがご支援の中で用いている目安です。業種や季節変動、借入の状況によって適切な水準は変わります。
「多すぎる」ときも、見直しのサイン
支払いが滞る不安
未来への投資にも動ける
成長の機会を逃す
安心ラインを大きく上回っている場合は、設備投資や人材への投資、借入金の返済など、お金をどう活かすかを考えるタイミングです。目安があるからこそ、「ここまでは守る」「ここから先は攻めに使う」という判断ができます。
WHYなぜ「利益」より「持ち月数」を見るのか
利益と手元資金は、次のような理由でズレます。
利益が出ていても、資金が減り続けているケースは少なくありません。だからこそ、利益とあわせて資金の持ち月数を見ることが大切です。
ACTION持ち月数が少ないときの5つの対策
- 資金繰り表で「最も資金が少なくなる月」を把握する月ごとの入金と支払いを並べると、資金が底をつきそうな月が事前にわかります。
- 金融機関には早めに相談する業績や資金に余裕があるうちの方が、条件よく借りやすくなります。
- 入金と支払いの条件を見直す売掛金の回収を早める、支払いのタイミングを調整するだけでも、手元資金は変わります。
- 固定費を見直す固定支出が下がれば、同じ手元資金でも持ち月数は伸びます。
- 返済計画と利益計画をそろえる借入金の返済の原資は「税引後利益+減価償却費」です。返済額に見合う利益の計画を立てましょう。
CHECK毎月チェックする習慣を
資金の持ち月数は、決算のときに一度見るだけでは不十分です。毎月の数字で確認し、変化に早く気づくことが大切です。
陽太グループでは、月次決算の数字をもとに、資金の持ち月数や決算着地の見込みを毎月お客様と一緒に確認し、「守り」と「攻め」のバランスを考えながら次の一手を決めています。
FAQよくある質問
手元資金に定期預金は含めますか?
一般的には含めて計算します。ただし、担保に入っているなど、すぐに引き出せない預金は除いて考えると、より安全な判断ができます。
借入で増えた現預金も含めてよいですか?
含めて計算します。ただし、借入金には返済が伴うため、今後の返済予定とあわせて確認することが大切です。
持ち月数は多ければ多いほど良いのですか?
安全性は高まりますが、資金を寝かせすぎると、成長のための投資の機会を逃すこともあります。目安を確保したうえで、未来への投資とのバランスを考えましょう。
成長支援に特化し、経営と数値をつなぐ「財務改善」と「経営計画」の専門家。
個人事務所を経て、全国展開する中堅税理士法人で企業税務・相続対策に従事。中小・中堅企業に加え、1,000億円規模の上場子会社や100年企業も担当し、組織再編、国際税務、事業承継、相続対策など幅広い案件を経験。社内では品質向上ツールの開発や研修講師、マーケティング委員会の発足などを主導したのち、独立。
現在は、企業が目指す「ありたい未来」から現状の課題を“見える化”し、財務改善・予実管理、経営方針の明確化、Google Workspaceを活用した情報活用などを通じて、企業の組織づくりに伴走している。
